はじめに
2018年時点で、タップダンスの楽器としての側面は世間にあまり認知されていません。しかしながら、ドラマーやパーカショニストをはじめとしたミュージシャンの前でタップダンスを披露すると、非常に興味を持っていただけることが多いのも事実です。
なかには自分もやってみたいとおっしゃる方も多く、タップダンサーとして大変うれしく思う反面、タップダンス側にその受容体制が出来ていないことに長年もどかしさを感じてきました。
具体的にどういうことかと申しますと、楽譜が驚くほど普及していません。タップダンスのリズムは現代においても、ほとんどの場合において、いわば「口伝」で継承されているのです。これではミュージシャンが近づきがたいのも無理はありません。
それだけでなく、楽譜が普及していないことはタップダンス自体の音楽的発展にとっても障壁となります。楽譜に起こすことで音楽的分析やフレーズの共有、練習が容易になることはいうまでもありませんし、拍の感覚やリズムの構造を掴む上で大変重要と考えています。口伝はニュアンスを伝える上で非常に大切です。しかし口伝だけだと人から人へ伝わるごとにステップやリズムが変質していき、オリジナルがどうだったか把握が困難になることもしばしばです。
楽譜が普及する前にスマホが普及してしまい、ステップを動画で手軽に撮影できるようになってしまったことも、楽譜の普及を阻む一因になっていると考えられます。動画は確かに便利ではありますが、後から見返したときに細かいステップの判別が困難であったり、練習時に動画のタイムラインを何度も指先で細かく行ったり来たりして確認する必要があるなどのデメリットも持ち合わせています。そんなとき正確でフレーズ全体を見渡せる楽譜が一枚あればどんなに練習がスムーズでしょうか。
楽譜を利用するかどうかは個人の自由ですが、タップの楽譜について情報を得られる場を準備し、選択肢を提示する必要はあると感じてきました。
以上のような背景から、このページを作成しました。
このページでは僕まさあしが2011年頃から開発に取り組み、少しずつ改良してきたタップの記譜法、名付けてFlat notation(フラット・ノーテーション)を紹介したいと思います。楽譜に馴染みのない方のために、リズム譜の読み方もゼロから解説しています。実践編として、Flat notationに基づいてオリジナルのルーティーンを紹介する場も設けました。皆さんの参考にして頂ければ幸いです。
タップダンスの音楽的発展と、タップダンスと音楽の橋渡しに寄与できればこれ以上の喜びはありません。
2018年7月吉日 真足(まさあし)